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ベンチャー・スタートアップの方は注意!令和4年6月施行改正特定商取引法について

プロコミットパートナーズ法律事務所弁護士の副島です。

特定商取引法に関する法律(以下、「特商法」といいます。)の一部を改正する法律案が令和3年6月9日に成立いたしました。改正された特商法の項目のうち、影響が大きいものとして、通信販売における詐欺的商法への対策があり、令和4年6月1日から施行されます。サイトを運営されているなどで、通信販売を行っている事業者の方は、「特定商取引法に関する表記」をサイト上に掲載されているはずです。この「特定商取引法に関する表記」を掲げているサイトを運営されている事業者の方は本改正の影響を受け、これから下記解説する改正法に対応する必要があります。

もし、自社サイトが改正特商法に対応しているか不安である方、改正特商法の内容についてご疑問点がある方は、弊所の「お問い合わせ」からご質問いただければ迅速にご対応させていただきます。弊所は、ベンチャー・スタートアップの事業活動の支援を中心に行っており、今回解説する改正特定商取引法についても、多数対応している実績があります。

さて、通信販売における詐欺的商法への対策として設けられた通信販売の申し込み段階における表示についての規定(改正特商法第12条の6)について、解説します。

 

1.改正特商法第12条の6の内容

令和3年改正特商法は、近年問題となっていた悪質な定期購入商法への対策が盛り込まれています。悪質な定期購入商法の主な手口として、「初回無料」や「お試し」との表示があるのに実際には定期購入が条件となっていたり、「いつでも解約可能」との表示があるのに実際には解約には細かい条件があるなどが問題視されてきており、定期購入に関する消費者生活相談の件数は、2015年には4,141件であったのが、2020年には59,560件と大幅に増加し、社会問題となりました。このような事態を受けて、改正特商法においては、通信販売の申込段階において、①基本的な事項の表示の義務づけ、②誤認させるような表示の禁止が義務付けられました。

 

2.表示しなければならない事項について(改正特商法第12条の6第1項)

事業者は、申込書面又は最終確認画面において、次の事項を表示しなければならなくなります。なお、最終確認画面とは、消費者がその画面内に設けられている申込みボタン等をクリックすることにより契約の申込みが完了することとなる画面のことを指し、広告や注文内容の入力から注文内容の確認までが、画面の遷移を経ることなくスクロールによって一連の画面として表示されるような場合には、最終的な注文内容の確認に該当する表示部分が最終確認画面にあたります。また、契約の申込み内容の確認画面の後に、クレジットカード情報等の決済に必要な情報の入力等の手続きのみ別の画面に遷移して行い、決済事業者による承認が完了した段階で契約の申込みが完了するような仕様の場合には、当該遷移をする前の、契約の申込み内容の確認画面が最終確認画面にあたります。

(1)販売する商品・権利若しくは提供する役務の分量

  • 販売する商品等の態様に応じた、その数量、回数、期間等。
    例:「キッズ用サンダル(柄A) 数量1個」
     :「オンライン講座 回数10回」
  • 定期購入契約において、各回に引き渡す商品等の数量と引渡しの回数
    例:「初回●個、2回目以降は●個」といった具体的な数量を示す必要があります。
  • サブスクリプションにおいて、商品等の提供期間や期間内に利用可能な回数が定められている場合にはその内容。
    例:「本コースは、3カ月の間に10回まで利用することができます。」
  • 消費者が解約を申し出るまで定期的に商品等が提供される無期限の契約やサブスクリプションの場合、その旨を表示することに加え、1年単位の総分量など一定期間を区切った分量を目安として表示することが望ましい。
    例:「本コースは定期購入契約です。お客様から解約の御連絡がない限り、商品が毎月送付されます。」
      「参考:1年分の総分量12箱。総額●円」
  • 自動更新のある契約は、その旨。
    例:「本コースは、お客様から解約の御連絡がない限り、お手続き無く、自動的に契約が更新されます。」
  • 同一商品等で内容分量の異なるものを販売しているときは、消費者においてそれを明確に区別できるよう、商品等名に併記する表示を行うのが適切とされる。
    例:「乾電池(5個入り)」、「乾電池(10個入り)」

(2)商品・権利の価格、役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)

  • 複数の商品等を購入する場合には、個々の商品等の販売価格及び支払総額。
    例:大人用サンダル(柄A) 商品価格2,200円(税込)
      キッズ用サンダル(柄B)商品価格1,100円(税込)
      お支払総額:3,300円(税込)
  • 送料がある場合は、実際に消費者が支払うこととなる金額
    例:大人用サンダル(柄A) 商品価格2,200円(税込)
      キッズ用サンダル(柄B)商品価格1,100円(税込)
      送料:300円(税込)
      お支払総額:3,600円(税込)
  • 定期購入契約において、消費者が支払う各回の代金と総額。各回の代金については、初回と2回目以降の代金が異なる場合には初回の代金と2回目以降の代金額。
    例:「初回●円、2回目以降●円。総額●円」
  • 無償又は割引価格で利用できる期間を経て有償又は通常価格の契約内容に自動的に移行する契約の場合は、有償又は通常価格への移行時期及び支払うこととなる金額。
    例:本商品は初回のみ無料であり、2回目以降は通常価格となります。
  • 消費者が解約を申し出るまで定期的に商品等が提供される無期限の契約やサブスクリプションの場合、その旨を明確に表示することに加え1年単位の総分量など一定期間を区切った分量を目安として表示することが望ましい。
    例:「本コースは定期購入契約です。お客様から解約の御連絡がない限り、商品が毎月送付されます。」
      「参考:1年分の総分量12箱。総額●円」

但し、申込み段階において販売価格や送料を確定させることが困難な場合など、特段の事情がある場合に限り、販売価格や送料等の表示に代えて、その確定後に連絡する旨などの表示をすることも可能とされています。

(3)商品・権利の代金又は役務の対価の支払時期及び方法

  • 支払期限の具体的な日時。
    例:「商品に同封する請求書により、商品到着後7日以内のお支払いとなります。」
  • 定期購入契約の場合は、各回の代金支払時期。
    例:「クレジットカードにより、毎月1回分のお引き落としになります。」
  • 銀行振込、クレジット等の支払方法。
    例:「クレジットカード払い(一括)若しくは、商品に同封する請求書による銀行振込になります。」
  • 金融機関、コンビニエンスストア等で振込みや支払手続きが必要な場合は、前払いと後払いのいずれであるかの明示。
    例:「コンビニ後払い。請求書到着後7日以内のお支払いとなります。」

(4)商品等の引渡時期又は役務の提供時期

  • 期限や期間
    例:「日時指定済み:●月●日14時~16時」等。
  • 定期購入契約の場合は、各回の商品等の引渡時期。
    例:「お届け時期:初回は御注文の完了から4日以内。2回目以降は、前回発送日から起算して1か月が経過する日に発送となります。」

(5)商品・権利の売買契約又は役務の提供契約に係る申し込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及び内容。

  • 商品等の販売等そのものに係る申込期間を設定する場合(購入期限のカウントダウンや期間限定販売など)、申込期間に関する定めがある旨とその具体的な期間。
    例:「期間限定商品。お申し込みは●月●日まで」

(6)契約の申込みの撤回又は解除に関する事項

  • 商品等について、返品特約がある場合はその内容。
    例:「本商品は、商品到着後7日以内であれば返品が可能です。ただし、不良品の場合を除き、返送費用はお客様の負担となります。」
  • 役務提供の場合は、申込みの撤回の可否やその方法等。
    例:「本コースは受講前に限り、ウェブサイトのマイページ内でのお手続きにより、お申し込みのキャンセルが可能です。」
  • 定期購入契約の場合、解約の申出に期限がある場合には、その申出期限。
    例:「契約期間途中で解約をご希望される方は、商品発送の5日前までに、お問合せ窓口にご連絡ください。」
  • 解約に違約金その他不利益が生じる契約である場合にはその旨及び内容。
    例:「契約期間途中での解約の場合、解約手数料として3,000円が発生いたします。」
  • 解約方法を特定の手段に限定している場合は、その内容。
    例:「キャンセル・返品については、お電話でのみ受け付けております。解約手続用窓口:(電話)XX-XXXX-XXXX」
  • 解約方法を電話による受付けとしている場合には、確実につながる電話番号。

 

3.「人の誤認させるような表示の禁止」(改正特商法第12条の6第2項)について

(1)当該手続きに従った情報の送信が通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みとなることにつき、人を誤認させるような表示(改正特商法第12条の6第2項第1号)

最終確認画面における情報の送信について、それが有償の契約申し込みとなることを消費者が明確に認識できるようにしていない表示は禁止されることになります。例えば、申し込みにおいて「無料プレゼント」等の文言を強調することにより、有償の契約の申し込みであることが分かりにくい場合には、消費者を誤認させる恐れがある表現になり、注意が必要です。

また、ネット通販の申し込み画面において、「注文内容の確認」といった表題の画面上に「申込みを確定する。」といったボタンが表示されており、それをクリックすれば申込みとなることが明らかな場合には一般に消費者を誤認させる恐れがないといえますが、一方で「送信する」「次へ」といったボタンが表示されており、画面上の他の部分でも「申込み」であることを明らかにする表示がない場合などの場合、当該ボタンをクリックすれば何らかの情報発信がなされ、次の画面に進むことは把握できたとしても、それが売買契約の申込みとなるものと明確に認識できないような場合には、消費者を誤認させる恐れがあると考えられます。

(2)改正特商法第12条の6第1項各号に掲げる事項につき、人を誤認させるような表示

最終確認画面においては、特商法上の表示事項を表示しており、それが不実の表示ではないものであったとしても、その意味内容を誤認させるような表示は禁止されます。

「人を誤認させるような表示」に該当するか否かは、その表示事項の表示それ自体並びにこれらが記載されている表示の位置、形式、大きさ、色調及び他の表示と組み合わせてみた表示の内容全体から消費者が受ける印象等を総合的に見て、判断されます。

例えば、定期購入契約において、最初に引き渡す商品等の分量やその販売価格を強調して表示し、その他の定期購入契約に関する条件を、それに比べて小さな文字で表示することや離れた位置に表示していることなどによって、引渡時期や分量等の表示が定期購入契約ではないと誤認させるような場合には、「人を誤認させるような表示」に該当するおそれがあいます。

特に、「お試し」、「トライアル」などを殊更に強調する表示は、一般的な契約と異なる試行的な契約である、又は容易に解約できるなどと消費者が認識する可能性が高いため、これに反して、実際には定期購入契約となっていたり、解約に条件があり容易に解約できない場合には「人を誤認させるような表示」に該当する恐れがあります。他にも、「いつでも解約可能」などと強調する表示は、消費者が文字通りいつでも任意に指定する時期に無条件で解約できると認識するため、実際には解約条件等が付いているにかかわらず、「いつでも解約可能」などの表示をした場合には、「人を誤認させるような表示」に該当する恐れがあります。

 

4.「顧客の意に反して通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の申込みをさせようとする行為」(改正特商法第14条第1項第2号)について

本条で具体的に問題となる行為として、「販売業者又は役務提供業者が、電子契約・・・の申込みを受ける場合において、申込みの内容を、顧客が電子契約に係る電子計算機の操作・・・を行う際に容易に確認し及び訂正することができるようにしていないこと」(特商法規則第16条第1項)とされています。この「容易に確認し及び訂正することができるようにしていないこと」とは、最終確認画面において、①消費者が契約の申込みに係る内容を容易に確認できるように表示していること、②その内容を容易に修正できる何らかの手段が設けられていることを指すとされています。具体的には、注文内容を訂正するための手段(「変更」、「注文内容を修正する」、「前のページへ戻る」)などのボタンが提供されていない場合には、「容易に確認し及び訂正することができるようにしていないこと」に当たる可能性があると考えられます。

 

5.改正特商法第12条の6に違反した場合

(1)契約の取消権

表示した事項が不実であった場合、表示すべき事項を表示しなかった場合、申込みや表示事項について誤認させるような表示をするなどの違反をし、消費者が誤認して申込みを行った場合は、消費者は当該契約を取り消すことができます。(改正特商法第15条の4)。

(2)罰則

改正特商法第12条の6第1項の規定に違反して、表示事項を表示せず、又は不実の表示をした場合は、違反者個人に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科あり)、違反法人に対しては1億円以下の罰金が科されます(改正特商法第70条第2号、第74条第1項第2号。)。

また、改正特商法第12条の6第2項の規定に違反して、消費者を誤認させるような表示をした場合は、違反者個人及び違反法人に対して100万円以下の罰金が科されます(改正特商法第72条第1項第4号、第74条第1項第3号。)

 

6.終わりに

実務としては、消費者庁によりガイドラインが公表はされているものの、具体的にどのような記載・文言にすれば適法となるのかの判断に悩まれるケースは多いのではないでしょうか。

改正特商法第12条の6第1項において求められている表示事項の記載不備は、取消権等が発生する可能性もあるため、改正特商法は確実に対応しておく必要があります。この対応においては、法律の文言やガイドライン例から画一的に考えるのではなく、消費者目線に立ってサイト全体の表示が適切であるかどうかという視点から見直しを進めていくのが重要であると考えます。